風前の灯火

個人的な沢登りの記録

大武川本谷〜水晶沢〜桑木尾根下降 2023/7/15-16

3人パーティ

遡行グレード 3級

 

1日目 雨のち曇

7:40ゲート前駐車スペース〜8:55スリット堰堤下〜9:25堰堤上〜12:45前栗沢出合〜13:30中栗沢出合〜14:55幕営地(1700m)

 

連休の天気。梅雨はまだ明けていないが悪くなさそう、いやむしろ良さそう。中でも天気が安定してそうな南アルプスは大武川へ向かうことにした。

大武川は甲斐駒ヶ岳に源を発し、黒戸尾根の南側を流れ釜無川に注ぐ一大支流である。尾白川流域が白州と呼ばれるのに対し、大武川流域は武州と呼ばれているとかいないとか。黄蓮谷ほどダイレクトではないが、こちらも甲斐駒山頂付近に突き上げる好ルートである。

黄蓮谷は以前登ったので、沢から甲斐駒は2度目となる。

 

前夜八王子で仲間を拾い、そのまま北杜へ。八王子からだと1時間半で着くんだね。意外と近くて好きです南アルプス

大武川沿いのダート林道をゲートまで突っ込み、ゲート前の広場で就寝。

 

時間になって起きると雨がパラついている。

まあ昼には止みそうな予報だったしいいか。

準備して出発。久々に長丁場なので気合いを入れて歩き出す。

林道を1時間くらい歩くと分岐にさしかかる。左は崩壊して通過できないらしいので川へ降りる右の道へ進む。ここで入渓。

下流なので水量が多い。徒渉を繰り返しながら進む。雨もなんか本降りでなかなか大変。

f:id:ponzu613:20230721101715j:image

入渓したところ

f:id:ponzu613:20230721104446j:image

徒渉を繰り返す

 

すこし進むと怒涛の水量をぶち流す一つの滝にぶつかる。これはいかにも登れないので右岸から巻く。巻きは容易。
f:id:ponzu613:20230721101546j:image

怒涛の滝

 

ようやくスリット堰堤に到着。しかし何か様子がおかしい。記録ではスリットの間を水が流れていて、平水なら下を潜れるとのことだったが、これは上から水が落ちていてどう見ても潜れるかんじではない。おまけに堰堤の一部、いや半分くらいが破損している。どうやら過去の増水で詰まり、破壊されたようだ。
f:id:ponzu613:20230721101749j:image

詰まって壊れたスリット堰堤

 

仕方ないので右岸から巻く。トラロープがあるので従って登るが、登りすぎた。20分くらいロス。少し引き返し残置ロープとハシゴで復帰。
f:id:ponzu613:20230721101635j:image

復帰中

 

堰堤の上に出た。驚くことに、堰堤と同じ高さまで沢床が上昇しており、壊滅的な土石流があったことを物語る。
f:id:ponzu613:20230721101623j:image

 

しばらく河原を歩くと滝が出てくる。水量が多く水線突破はできないので両脇を攻めていく。

気付くと雨も止んでいた。
f:id:ponzu613:20230721101744j:image

 

広がる白い花崗岩の岩盤に碧い水が迸り、非常に美しい。晴れていれば本領発揮なのだろう。
f:id:ponzu613:20230721101558j:image

 

大岩に隠れた4m滝。個人的に楽しかったところ。写真中央の岩の隙間のバンドを匍匐前進で這い上がり巻く。
f:id:ponzu613:20230721101641j:image
f:id:ponzu613:20230721101646j:image

這い上がり中

 

そして連瀑帯。右岸からまとめて巻く。
f:id:ponzu613:20230721101702j:image
f:id:ponzu613:20230721101726j:image

復帰したところ。広々としてすごく良い。

 

ゴルジュっぽくなり、横手の滝10mがチラ見えしている。これも右岸巻き。
f:id:ponzu613:20230721101759j:image
f:id:ponzu613:20230721101652j:image

前栗沢出合くらいまでは岩盤が発達した区間が続き、沢床が広くていわばこの沢の白眉ですね。日が差せば非常に美しいであろう景観が続く。生憎の曇りが悔しい。

 

そのうち摩利支天が見え始める。尖っている。f:id:ponzu613:20230721101657j:image

 

前栗沢を過ぎたあたりだったかな。

この辺からやや荒れた渓相になってくる。
f:id:ponzu613:20230721101732j:image

前栗沢以降は高巻きも減り、登れるかんじになってくる。

 

摩利支天前沢のすぐ手前で幕とした。

虫が1匹もいなくて寒くもなく超快適だった。
f:id:ponzu613:20230721101553j:image

 

2日目 晴ときどき曇

7:30出発〜7:35摩利支天前沢〜8:40本流復帰〜13:30登山道〜14:30黒戸尾根分岐〜15:00まで休憩〜16:30七丈小屋〜17:30黒戸山〜18:00まで休憩〜23:00桑木尾根探勝路〜24:00駐車スペース

 

2日目は晴れて朝から暑い。歩いて5分で六町の滝の入口に立つ。これはセオリーに従って摩利支天前沢の枝沢からコルを越えて巻くルートへ進む。
f:id:ponzu613:20230721101708j:image
f:id:ponzu613:20230721101754j:image

1時間程度で巻き終了。降り立ったところがキレイでいい場所だったので少しぼんやり。

 

その後は特に何もなく、歩き続けると仙水峠へのエスケープ地点となるがこれはスルーして水晶沢へ入る。どこからが水晶沢なのか正確に分からないが、なんか突然滝がたくさん出てきて渓相が一変するのでそこから水晶沢ということにした。
f:id:ponzu613:20230721101807j:image

水晶沢へ入った

水晶沢は登れる滝が続き楽しい。

途中、滝を登って顔を上げたら男の人がいてビビった。遭難しに来た人かと心配したが、聞けば環境省からの依頼で、絶滅危機の南北アルプス固有種の蝶を保全するための調査に来ているとのこと。当人は趣味でやってると言っていた。仙水峠から山を登って藪漕ぎして降りてきたらしい。いやなかなかの変人…。沢を登ってくる方が頭おかしいとか言われたが、御仁も明らかに変人でいらっしゃる。

 

さて、変人(褒めてる)と会話後すぐにラスボス20m大滝が出現である。

f:id:ponzu613:20230721110233j:image

右岸巻きとの事前情報を得ていたが、見回すと左岸のほうが楽に巻けそうに見えたのでやってみる。初めに踏み跡もあり、途中まではズイズイ登れるが、岩壁にぶち当たって行き詰まる。左右を迂回することも出来ず諦めて戻る。ここで無駄に粘ったせいで1時間くらいロスした。

右岸は普通に巻けた。ガレ沢を登って、右手の尾根に藪が薄く踏み跡も着いている弱点があり、脳死で辿っても沢に復帰できるよく出来た巻道となっている。分かりにくいけど、これを見つけられれば楽勝です。

 

その後はしばらく水流があるが急に枯れ、大量の羽虫が棲息する木の葉っぱを出来るだけ揺らさないように詰めていく。間違えて2500mの二俣(三俣?)を右に入った。やがて頭上を覆う木がなくなり、白い花崗岩の壁が行手を遮る。ザレに苦戦しつつこれを登りきると、摩利支天と駒ヶ岳山頂へ分岐する登山道の途中に飛び出た。藪漕ぎはなかった。

六万石からの急登がよく見えたがキツそうなので二俣を間違えて良かったかもしれないと思った。
f:id:ponzu613:20230721101813j:image

山頂へ向かう。


f:id:ponzu613:20230721101721j:image

黒戸尾根への分岐。

山頂は一度行っているのでパスして下山開始。

 

黒戸山までは一般登山道。2時間半で黒戸山に到着。いつもならもう下山完了くらいの時間歩いたけどここからが核心なのだ。
f:id:ponzu613:20230721101816j:image

黒戸山から立ちションしながら撮った鳳凰三山

 

さて、下降開始。序盤は踏み跡も割と明瞭でテープも頻繁に巻かれていて分かりやすい。

しかし段々テープの数が減ってきて、踏み跡も途切れたり薄くなったりしてきて、19時半ごろ完全に日没して視界が急激に悪くなると難易度が一気に上がってしまった。

何がムズイって、谷の基部が地形図に表されてないことなんですよね。地形図上では1つの広い尾根になっていても、実際は2つの尾根になっててその間に谷の始まりがあったりして、谷を挟んでどっちの尾根が正解か分からないという。

暗くて尾根がどこへ伸びているかも見えないから、とりあえず2択で進んでみて違ったら戻るみたいなかんじで、できるだけ間違えたくないので地道にゆっくり降りて行った。

そういう2択を3回間違えて、ドロドロのヘロヘロになりながらやっと最後の法面に辿り着いた。最後は法面の懸垂下降なのだ。暗くて下にあるはずの道までロープが届くか分からんが、とりあえず途中の立ち木でピッチが切れそうだから懸垂で降りる。降り始めたら下に道が見えた!ロープも届く!歓声が上がり、みんなスルスルと降りてきてへたり込んで終了。。。ではない。まだこの林道歩きをこなさないと帰れない。もう脚も痛いしクタクタだったが星空が綺麗だったので星座同定(できない)をしながら歩いた。24時帰着。お疲れ様でした。
f:id:ponzu613:20230721101736j:image

最後のヘッデン懸垂下降

 

 

下山後。

松屋で牛丼を食って、24時間銭湯に向かったが2時から5時は清掃で入れないとのこと。24時間とは。仕方なく風呂も入らず激臭いまま家に帰りました。

おしまい。

 

〜総括〜

沢登り自体は水量豊富な沢を高巻き主体で登るクラシカルなもの。近年主流(?)の、大滝をゴリゴリ登攀する先鋭的スタイルの沢登りが好きな人には向いてないかもしれない。

登れない滝には巻道がついており、時折際どい箇所があるものの嫌な草付きとかはなく総じて巻きやすい部類で、程よい緊張感があって楽しめた。ガイド本の通り仙水峠から下山するのなら2級上は適切なグレードと感じた。
しかし水晶沢を詰めて黒戸尾根を下り、さらに桑木尾根の下降までも含めると、体力度やRFの難しさ(特に日没後)からもうハーフランクくらいグレードが上がると思いました。

2泊3日で七丈小屋に泊まったりすれば無理なく行ける気がする。そんなかんじでした。