塩ノ川上部 2021/9/11
塩ノ川は吾妻三名渓の一角で、もう2つは中津川と松川であるが、中津川は7月に遡行し大変楽しかった。以来、他の2本にも興味があり遡行したいと思っていたのだ。正直、中津川がとても良かったのでそれには劣るが、塩ノ川も見どころ豊富な秀渓であった。
4人パーティ
遡行グレード:2級上
9/11 曇り
8:15駐車地点〜8:35貯水池〜9:05入渓〜9:45くらげ滝〜11:20あじろ滝〜12:05銚子滝〜12:50やな滝〜13:45支流12m滝〜14:20緑色の釜〜14:50枯滝20m〜15:15雪代の床〜15:40大滝30m〜16:10CS7m〜17:00浄土平
前夜、浄土平ビジターセンターに集合し眠るが、強い雨が降っていた。早朝に起点まで移動するが、この間も雨が降ったりやんだり。兎にも角にもパイロットファーム6号線の分岐のY字路に車を停めた。駐車地点は「沢の扉」の記録を参考にさせていただきました。この先で道は細くなり、両岸から藪が激しくなってきてやがて舗装もなくなり廃道となる。車で突っ込めないこともないが傷だらけになるでしょう。
さて、ここから40分程歩いて入渓となる。塩ノ川沿いの林道も、そこへ続く踏み跡も明瞭だった。
貯水池を通過
地形図上のゴルジュ記号を抜けたあたり、標高990mくらいの地点から急斜面を伝って沢へ降りる。案の定水量が多かったが、谷は深く雨に濡れて雰囲気があるなあというかんじ。水は温泉成分で青白く濁っている。
入渓直後
この沢は岩がデカい。いつまでも巨岩帯が続くのである。巨岩→高巻き→巨岩→高巻きといったかんじで体力勝負の遡行となる。
そうして最初に現れるはくらげ滝15m。上に同サイズの滝がもう一つ控えている。昔は岩が被さりくらげのように見えたらしいが、その岩は崩落し今はくらげの面影もない。上の滝と合わせて2段30mと言ってもいいかもしれない。
吾妻の沢の例に漏れず大高巻きとなる。ここは右岸から。上部で岩壁が被さってくるので、左から迂回するように巻く。
くらげ滝 15m
巻き途中から
くらげ滝とこの次のあじろ滝は、それぞれ短いが強烈なゴルジュを形成しており、滝の巻きと言うよりはゴルジュ帯の巻きというかんじで結構長めに巻くことになる。土の斜面はズルズルで、木や笹を掴みながら四つん這いで頑張る雰囲気のやつである。
そんな感じでくらげ滝の巻きを終え、また巨岩を越えていく。途中、神秘的な乳青色の釜が幾つも現れる。一度泳いでみたが水中が全く見えず不気味だった。
あじろ滝も右岸から巻く。くらげ滝同様ゴルジュ帯を見下ろしながら巻いていく。途中沢床に降りられる場所があり、滝を覗くことができる。
巻きながらゴルジュを見下ろす
ここら辺のゴルジュが結構強烈で、塩ノ川上部で完全水線遡行に挑む場合あじろ滝のゴルジュが核心となるでしょう。
降りて覗ける滝
その後再び高巻きに戻るが、その次の滝がデカそうで、それがおそらくあじろ滝なのだが、我々は見に行くのが面倒なのでそのまま巻きで通過してしまった。
あじろ滝本体と思われる滝の滝壺
巻き続ける
あじろ滝を巻き終え、またも巨岩をこなしていくと間もなく銚子滝13mである。岸壁に四角く切り取られた空から放出される直瀑で、なかなか美しい。中津川の神楽滝を小さくしたみたいだなと思った。
銚子滝は左岸巻き。これはゴルジュを形成していないのでサクッと終わる。
銚子滝 13m
銚子滝上。突然の穏やか系。
銚子滝の上は突然穏やかな渓相になり、巨岩もなくなる。ほどなくしてやな滝が出てくる。左の角を頑張れば登れそうだが見るからにヌメヌメである。寒いし左岸から巻いた。
やな滝 6m
ここから20m枯滝までの区間は特に何も無い川歩きとなり粛々と歩く。途中支流の12m滝が左岸から流れ込んでくる。澄んだ青い水と緑の苔と赤い岩のコントラストが印象的な滝だった。どこから流れてるのかよく分からないのだが、崖から染み出してるのか?
支流12m滝
このあたりからあり得ないくらい滑る黒い苔が目立ってくる(谷川などで見る黒い苔とも違う)。フェルトのフリクションも0になるほど滑りまくって、これには参った。これに混じって緑の苔もたくさん生えてきて、緑色の釜が近いことを予感する。
案の定、10m枯滝と緑色の釜が現れた。枯滝はこの時は枯れていなかったし、緑色の釜は思っていたほど緑ではなかった。雨で藻が流されたのか?とはいえ確かに静かで印象的な場面だったので、少し休憩とした。
滝の左から登れた。
また歩くと、聳え立つ20m枯滝が見えてくる。例によって枯れておらず、西表島のピナイサーラの滝のようだった。普段はこの滝も枯れているらしいので、幻の滝である。釜のミルキーブルーも一際濃い色で美しく、塩ノ川で一番の見どころと言っても良いだろう。
ピナイサーラの滝風20m滝
ピナイサーラは左岸巻き。トポでは右岸巻きとなっているがどう見ても左岸です。
さて、これを登るとすぐに雪代の床と呼ばれる浸食されて不思議な景観の岩盤地帯が始まる。
ここもいつもは水流がないらしいが、この日は普通に流れていた。
雪代の床が終わると、ほどなくして30m大滝となる。大滝と言っても下半分は多段で傾斜も緩く普通に歩けるため、大滝というかんじはしない。
上半分が登攀となるが、それほど難しくもなくノーザイルで全員クリア。
30m大滝
この後は何もなく、歩き続けると次第に火山ぽい荒涼とした雰囲気になっていく。
7mCS滝を見たら左岸より一旦エスケープ。浄土平へ続く踏み跡を拾う。
7mCS
途中で再び塩ノ川を徒渉するので、ここで沢に復帰。浄土平の木道へ向けて源流を歩く。
湿原の木道にぶつかって終了。
デポした車で起点の車を回収へ。下山が無いっていいですね。癖になりそう。
今回は日帰りなので上部だけだったが、見所がたくさんあり面白い沢だった。特に銚子滝までの前半は大渓谷の雰囲気で楽しい。後半は川歩きがやたら長いが、その後の雪代の床と2つの枯滝も見応えはある。特に20mの枯滝は、枯れていないときに訪れれば離島の大滝を見ているかのようで、なかなか感動ものである。
日帰りでこれだけの内容を楽しめれば充分だろう。次は下部の遡行もしてみたい。